一般振替DVP制度におけるリスク管理

一般振替DVP制度では、DVP決済が確実に行われるように、様々な仕組みを設けて、厳格なリスク管理を行っています。

振替実行条件によるリスク管理

ほふりクリアリングは、一般振替DVP制度を利用しようとするDVP参加者の個々の取引について債務引受けを行う際に、次の3つの条件(これらを総称して振替実行条件と呼んでいます。)を充足することを求めています。

1. 確保資産(余裕値)の条件

確保資産(余裕値)の条件は、DVP参加者から引き受けることになる支払債務の合計額以上の評価額の資産をほふりクリアリングがDVP参加者ごとに確保している状態にあることを求めるものです。
確保資産は、そのDVP参加者が、(1)ほふりクリアリングに預託した現金(これを参加者基金と呼んでいます。)、(2)ほふりクリアリングに預託した株式、国債等の有価証券(これを担保指定証券と呼んでいます。)及び(3)その決済日において既に一般振替DVP決済による振替が実行され、振替完了条件を充足したときにそのDVP参加者が受領することとなるほふりクリアリングDVP口座内の有価証券(これを受入予定証券と呼んでいます。)の3つで構成されます。なお、(2)担保指定証券及び(3)受入予定証券については、前営業日の終値に掛目を乗じることにより確保資産としての評価額を算出しています。
確保資産(余裕値)の条件は、あるDVP参加者の確保資産の評価額から、その差引支払額(DVP参加者の日中におけるネッティング後の資金決済ポジションが支払いとなっている場合の支払額)を引いた数値(これを余裕値と呼んでいます。)が常に正の数であることを求めるものです。これにより、万一あるDVP参加者に資金決済の不履行が生じた場合でも、そのDVP参加者の確保資産を換価処分することで、ほふりクリアリングが引き受けた債務を確実に履行できることとなります。

1:余裕値に関わる条件(渡方及び受方)

2.差引支払限度額の条件

ほふりクリアリングは、各DVP参加者の過去の一定期間におけるDVP決済の利用実績に応じて、DVP参加者ごとの差引支払額に一定の上限(この上限を差引支払限度額と呼んでいます。)を設け、差引支払限度額についても一定の範囲を超えないよう上限(この上限を最大差引支払限度額と呼んでいます。)を定めています。
差引支払限度額の条件は、一般振替DVP制度にもたらされる最大のエクスポージャーを管理することにより、ほふりクリアリングがあらかじめ準備する流動性資金の範囲内にリスクを限定することを目的としています。

2:差引支払限度額に係る条件(受方)

3.振替対象証券残高の条件

このほか、ほふりクリアリングは、証券の渡方となるDVP参加者に、一般振替DVP制度を利用しようとする振替の対象となる銘柄について、振替請求の数量以上の証券残高があることを求めています。

3:振替対象証券残高に係る条件(渡方)

リスク管理の条件の変化

ほふりクリアリングは、DVP参加者が一般振替DVP制度を利用しようとする個々の取引について、その都度、上記の振替実行条件が充足されているかどうかを確認します。ほふりクリアリングは、これらの条件が充足されたときに、はじめて一般振替DVP制度における債務引受けを行います。
ほふりクリアリングの債務引受けの実施に伴うリスク管理の条件の変化は、次のとおりです。

STEP1A社は、参加者基金2をほふりクリアリングに預託しています。この時点では、証券の振替は発生していないため、資金の計算はありません。

1:業務開始時

STEP2A社からB社へ、決済価額3の証券の振替を行います。A社は、代金として決済価額3を受取る権利が発生します。(総受取額3を記帳)

2:B社とDVP決済を実行(証券3をB社に引渡し)

STEP3同時に、A社の確保資産として、受入予定証券4.9(掛け目0.7を乗じた額)が増加します。

3:C社とDVP決済を実行(証券7をC社から受取り)

金融グループ単位のリスク管理

ほふりクリアリングは、DVP参加者(連結ベース)の破綻に対応できるよう、同一の金融グループ(これをDVP参加者グループと呼んでいます。)に属するDVP参加者の差引支払限度額の合計に一定の上限を設けています。

流動性資金の確保

ほふりクリアリングは、万一DVP参加者に資金決済不履行が発生した場合においても、常時準備している参加者基金及び銀行融資枠の利用によって流動性資金を確保し、これをもって当日の資金決済を所定の時限までに完了させるものとしています。
ほふりクリアリングは、この流動性資金の規模として、ネッティングを伴う決済システムについての国際標準とされる「ランファルシー基準」の2倍の水準を準備しています。一般振替DVP制度は、最大差引支払限度額を設定されたDVP参加者2社又はDVP参加者グループ単位の破綻時の資金決済について、融資枠を提供する銀行1行が破綻した場合であっても完了することができる極めて安全性の高い仕組みとなっています。

確保資産及び掛目の十分性の検証(ストレステスト等の実施)

ほふりクリアリングは、債務引受けの条件の一つとして、上記1.の確保資産(余裕値)の条件を求めており、万一DVP参加者に資金決済不履行が発生した場合には、そのDVP参加者の確保資産を売却処分することで、資金決済不履行の発生時に利用した流動性資金の回収を行います。

確保資産は、参加者基金、受入予定証券及び担保指定証券の3つから構成されますが、このうち受入予定証券及び担保指定証券については、これらを売却処分するまでの間に生じる価格下落リスクに対応するため、前営業日の終値に掛目を乗じることにより確保資産としての評価額を算出しています。

ほふりクリアリングでは、信用リスクのうち極端であるが現実に起こりうる市場環境(ストレス下)における確保資産(財務資源)の十分性を検証するためストレステストを日々実施し、また、担保掛目の十分性を検証するためバックテストを日々実施しています。なお、検証結果については、四半期ごとに国際原則に基づいた定量的情報開示にて公表しています。

具体的なストレステスト及びバックテストの実施内容は概略以下のとおりです(※1)。

最大下落率による評価額(A)
〈ストレステスト〉
受入予定証券及び担保指定証券の数量に、決済日前営業日の終値とDVP制度開始以降(1987年ブラックマンデー発生時を含む。)における銘柄ごとの最大下落率に基づく掛目を乗じることにより算出した金額の合計値
売却額(B)
〈バックテスト〉
受入予定証券及び担保指定証券の数量に、決済日翌営業日(※2)の終値を乗じることにより算出した金額の合計値
担保掛目による評価額(C) 受入予定証券及び担保指定証券の数量に、決済日前営業日の終値と掛目を乗じることにより算出した金額の合計値
  • ※1
    ストレステスト及びバックテストは、各DVP参加者のほか、DVP参加者グループ単位でも実施しています。
  • ※2
    ほふりクリアリングは、DVP参加者に資金決済の不履行が生じた場合、原則として不履行発生日の翌営業日に当該DVP参加者の確保資産を売却処分することとしています。
〈ストレステスト〉
(A)≧(C)を確認
最終的には、各DVP参加者の確保資産(参加者基金とストレステストに基づく受入予定証券及び担保指定証券の金額の合計)の評価額が差引支払額を下回っていないことを確認しています。
〈バックテスト〉
(B)≧(C)を確認

DVP参加者へのモニタリングの実施

ほふりクリアリングは、DVP参加者の財務状態や業務執行体制について、継続的なモニタリングを実施し、個々のDVP参加者における信用リスクや事務リスクの変化が、一般振替DVP制度に与える影響をコントロールしています。

お問合せ先

一般振替DVP制度全般について

03-3661-0181

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